ペスタロッチ

小学生の時、両親の本棚に「頭の体操(多湖輝・著)」という本があり、この本が実は結構好きだった。

この本はシリーズになっていて、そのシリーズの一部に「偉人達からの挑戦」・・・だったかな?みたいなのがあって、各問題が昔の有名人から出題された、というような設定になっていた。アインシュタインだのニュートンだの、そういう人たちが出しそうなクイズが色々と掲載されていた。

その中に「ペスタロッチ」という人が紹介されていて、その人のプロフィールを読んでとても感銘を受けた。「自分のためには何もしなかったが、他人の為には何でもした人」という言葉がお墓に彫られているらしい。 インターネットで調べてみると、19世紀前後の人物でスイスの教育家、とのこと。日本の教育家でも彼の影響を受けた人は多々いるらしい。またスイスの20フラン紙幣に肖像画が描かれているようだ。

僕も小学生のときにこれを読んで、学校の先生という職業に憧れたが、実際に大学に入って教育課程のクラスを取ったら、ものすごく大変で専門の勉強ができなくなってしまい、大学2年で諦めてしまった。でも、その時に履修した「教育心理学」や「教育原理」というクラスはかなり面白かったし、その時に習ったことは少なからず覚えている。

「子供を子ども扱いしないで、一人の人間として接するべき」とか「子供と同じ視線で接するべき」というのは教育原理の木村先生がよく言っていたことだ。「親や大人が子供を育てる、教育する、というのがそもそもの間違いで、子供からも教えられることが沢山あり、一緒に成長していく」というのが先生の基本だった。ちゃんとした教科書もあったが、いつもそれからは反れて、先生が根本に思っている「子育てとは」という話がとても面白かった。

教育心理学の丸山先生は笑顔を1つ見せない、とても厳しそうな先生で、「どうしてこんな人が教育心理?」と思うぐらい。でも、ボランティアで障害者教育なども行っていて、先生を慕うゼミの学生などが夏休みなどに色々な施設を訪問しているんだとか。当時、希望者が多い割には狭き門だった「先生」という職業が「そんなに甘くないぞ」というのを教わったような気がする。

あれから数十年が経って、今振り返ってみると、もう毎日が忙しくて、バタバタして、自分のことだけで精一杯の毎日になっている。「他人の為に何ができているだろうか」と思うと、何もできてないな、と思う。逆に回りの人たちにとっても助けられていて、助けられてばかりで申し訳ないなぁ、と言うことばかり考えてしまう。

今はとにかく目の前にある、自分のやるべきことを頑張るしかない。数年して子育ても落ち着いてきて、もし心と時間に余裕ができたら、少しづつ自分ができる何かをしていこう、他人の為に。